一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
甲板磨き用の椰子割り
日本丸の船首楼と船尾楼の甲板材にはチークが、一層低い凹甲板には米松が使用されている。建造以来、実習生は
早朝の作業として、甲板に砂を撒き、椰子の実の二つ割りを用いて磨いてきた。船乗り用語では朝食前のこのような早朝の作業を
一般に「タンツー」と称している。「仕事に取り掛かる」という意味の英語の"turn to"に由来する。普段においては、この二つ割り
の椰子の実を使って、実習生が総出でワッショワッショと掛け声を掛けながら、あるいはタンツー節を歌いながら、甲板磨き作業を
行う。しかし、作業をした後などの甲板の汚れがひどい時には、椰子の実の代わりに一種の砥石(といし)が使われる。船乗り用語では
この石を「ホリーストーン」(聖なる石)と呼んでいる。 実習生は起床後にして7時30分の朝食まで、この椰子割りで「タンツー」(仕事始め;turn to)をする。55年間の甲板磨きの 結果、いくら堅いチークからできた甲板であっても、何センチも削り取られ磨り減って来た。画像はそれを立証する。
[参考文献] 荒川博 「帆船への招待」 海文堂、昭和61年、14-16頁
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