HKNDグループは、2014年7月7日、マナグアにてニカラグア運河総合開発プロジェクトに関するワークショップを行なった。
同グループは、2013年にオルテガ大統領政権と標記運河建設に関するコンセッション契約を締結したが、今回は、契約締結以来
これまで取り組んできた調査の結果を公表したものである。
以下は報告書の摘要である。報告書は同グループを構成するコンサルタントのEnvironmental Resources Management (ERM) の
ネームで作成されたものである。
* ワークショップと報告書の公表が目的とするところは、運河建設プロジェクトの現況に関する情報を共有し、関係者に
相談を諮るプロセスを開始し、コミュニケーション・チャンネルを創設することである。又、プロジェクトに関しての進言を
得ること、国際的なグッド・プラクティスを通してプロジェクトの履行に関する対話を図ることである。
* ニカラグア運河はより大きな船に対してサービスや便宜を提供し、アジアと米国東岸や欧州の近代諸港とをより短い
ルートで結びつける。
・ 将来的には、今後5年から10年の間に、WTO発表の世界の商業的取扱量は、最近の成長率の3倍以上をもってその発展が
見込まれると期待されている(WTO)。その発展は、今後10年間において、船復(la capacidad naviera)についてのより
大きな需要を作り出し、又パナマ運河における混雑をもたらすことになろう。
* 船舶の大型化の拡大によって、現存運河の通航可能容量(la capacidad de los canales existentes)はすでに限界に達してきた。
船腹がより大きくて効率の良いコンテナ船はパナマ運河を通航できなくなって来ている。
* 第二の中米運河は、より低コストの新しい海上輸送ルートとして、世界的規模の需要を満たすことに貢献しよう。
EIASのためのプロジェクト概要
* 両洋間運河について:
運河の総延長は、約278km。
計画船舶は、25,000個積載コンテナ船、40万載貨重量トン(dwt)の石油タンカーおよびばら積み船。
計画水深は、27.6m~30m。
計画幅員は、230m。幅員520mの通過待避に供される側湾(bahías laterales de paso)が付帯する。
閘門: カリブ海および太平洋側に建設される。
開削されるおおよその最大標高差(máxima elevación aproximada del corte): ~海抜200メートル
(海抜: msnm/metro sobre nivel marítimo)である。
* 港湾: 太平洋およびカリブ海側に建設される。
* その他の施設: 野営(キャンプ)施設、コンクリート製造プラント、エネルギーの補給施設、水の供給施設および排水施設
ルート諸案: 一般事項
* 制約的事項
ニカラグアの南部地域を通過すること (北部地域では両洋間の地峡距離が大幅に長くなる)、北部地域では標高がより高いこと
(山岳地帯である)、ニカラグア湖を横切るべきであること。
* 繊細な課題(センシティブなテーマ)
高い生物多様性をもつエリア、先住民族が生活する領域(テリトリー)、国際的に傑出した保護区、ルートに関係するエリア
での脆弱な経済、そのエリアに向けての外部からの移住者の流入。
従前からの候補ルート: ニカラグア地峡の東部地域(ニカラグア湖のカリブ海寄り)におけるルート。
● 従前からの候補ルート図: ルート①~⑥ [拡大画像: x26141.jpg] |
・ ルート1&2: ブルーフィールズ湾(Bahía de Bluefields)とセロ・シルバ保護区(la Reserva Cerro Silva)。
[注]セロ・シルバ保護区: エスコンディード川(Río Escondido)辺りからプンタ・ゴルダ川(Río Punta Gorda)辺りにかけての、
東部地域の東半分ほどのエリアをもつ。
・ ルート3: ブルーフィールズ湾とセロ・シルバの中央地域。
・ ルート4: プンタ・ゴルダ(Punta Gorda)とトゥーレ川(Río Tule)。
・ ルート5: プンタ・ゴルダ、サン・ファン川(río San Juan)、サン・カルロス(San Carlos)。
・ ルート6: インディオ・マイス(Indio Maíz)、サン・ファン川、サン・カルロス。
国際的な保護区
● 従前からの6つの候補ルートと自然保護区などとの位置関係を示す。 [拡大画像: x26142.jpg]
[拡大画像: x26142.jpg]
a b c
a[拡大画像: x26143.jpg] b[拡大画像: x26144.jpg][拡大画像: x26145.jpg] c[拡大画像: x26146.jpg]
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ルート1&2の除外について(その理由)
・ ナグーナ・ペルラス (Laguna Perlas) とブルーフィールズ湾には、絶滅が危惧される海ガメ4種の棲息地が存在する。
[注]ナグーナ・ペルラスはブルーフィールズ湾の少し北方に隣接する潟。
・ ブルーフィールズ湾はラムサール(RAMSAR)の登録湿地(Humedal)になっている。
・ ブルーフィールズ湾、および同湾に注ぎ込む河川の河口域における水の力学的特性(la hidrodinámica)への潜在的インパクト。
・ エコシステム関連サービス産業に対する潜在的なインパクト。
・ 近隣の珊瑚礁(arrecifes de coral)。
・ 先住民族の重要な存在。
・ 多い人口。
・ 工学面とコスト面への配慮。
ルート5&6の除外について(その理由)
* ニカラグア行政府が下した決定によって(decisión ejectiva del Gobierno de Nicaragua)、サン・フアン川が絡むルートは
除外された。[注・参照]
[注] ニカラグア外務省は、2014年5月13日にコスタリカ外務省に対して一通の書簡を送った。ニカラグア政府は、その書簡の中で、
予備調査に基づき国境河川(サン・フアン川のこと)に沿って運河を建設するという諸計画を放棄するとの決定を下した旨の
説明を行なった。
* 環境上の理由:
・ インディオ・マイス生物保護区(Reserva Biológica Indio Maíz)へのインパクト。
・ エル・コラル(El Coral)における海ガメの営巣(anidamiento)上の重要場所。
・ サン・フアン川のエコシステムへの考慮。
ルート3&4との比較について
* 生物多様性: 保護区、ラムサール条約の登録湿地、陸上棲息域の性質、河口域(estuarinos)、サンゴと海ガメの絶滅危惧種
の存在。
・ 社会・経済的なインパクト: 人口、先住民族、社会的な混乱(alteraciones)、文化的な感受性(繊細性、センシビリティ)、その他の資源。
● ルート3&4との比較 [拡大画像: x26147.jpg]
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ルート3の除外について(その理由)
* IFC PS6/エコシステム・サービス産業関連: 運河の影響を受ける村落(コミュニティ)はエコシステム関連のサービス提供産業に
高い優先順位を与えていることから、ルート3は、そのサービス提供産業に強いインパクトをもたらすことになる。
ブルーフィールズのコミュニティは、ブルーフィールド湾によってもたらされる
エコシステム関連のサービス提供産業に大きく依存している。
* IFC PS6/危機的な状況下にある(クリティカルな)棲息域: ルート3は、ブルーフィールズ湾にあるラムサール条約に関係する区域にインパクトもたらし、
又クリティカルな棲息域であることを宣言する動議付けにもなった生物多様性の価値に対して重大な負の影響をもたらすことになる。又、生物多様性の
価値の源泉となり、かつ維持する役割を果たしている生態学的プロセスに対して負の影響をもたらすことになる。
* IFC PS7/先住民族: ルート3は、ブルーフィールズ湾、即ちラマ・キー(Rama Cay)を含むラマ族の伝統的な領域(テリトリー)であり、さらに
ラマ族の伝統の中心地であり、且つ人口と文化の中枢部であるところに影響をもたらすことになる。
[注]ラマ・キー: ブルーフィールズ湾の南部水域に浮かぶ小さな島で、ラマ族の重要な居住地となっている。
修正されたルート4: 選定されたルート
選定されたルート: 全体の展望
● 選定されたルート: 全体の展望/GoogleMap [拡大画像: x26150.jpg]
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・ 計画船舶: 25,000TEU積載コンテナ船、又は40万載貨重量トン(dwt)の船。
・ 計画吃水: 27.5-30m。
・ 計画幅員: 230~520m (通過待避のための側湾を含む)。
・ 2つの閘門: カリブ海・太平洋側に各1基ずつ。
選定ルートの実現可能性(viabilidad)への挑戦
・ 生物多様性
保護区:
・ 自然保護区、ラムサール条約の登録湿地、ユネスコの生物圏(Biósfera)保護区。
・ 種―国際自然保護連合(UICN)およびニカラグアのレッドリスト(lista roja)、その他の種。
・ メソアメリカの生物回廊(Corredor Biológico Meso-America)。
水資源: ニカラグア湖。
先住民族の領域。
非自由意思による再入植(強制的な再定住化・再移住)。
生物多様性/保護区
・ 運河がいくつかの保護区を横切ることは不可避的である。
・ 多くの保護区は生存のための農業 (la agricultura de subsistencia) によって脅かされ、又は影響を受けている。
・ 対策のための戦略としては、
緩和(軽減)の階層(jerarquía de mitigación)を適用する。
避けがたいインパクトについていかに緩和し相殺(オフセット)するか、その実現可能性についてニカラグア政府・諸機関
および重要なNGO(ラムサール、国際自然保護連合、ユネスコ、FFI、バードライフ、WCS)からの協力をえる。
・ 救済の可能性が残される区域において森林伐採・乱伐を防止する。そのためにも、未だ残存している資源を増殖したり、又制度的な対応策
(キャパシティ)の強化を図る。
生物多様性―絶滅の脅威にさらされている種
* 国際自然保護連合(EN/CR)のリスト中の12種以上が調査対象区域内に潜在的に棲息している。
・ 海洋域: 海ガメ3種(A/P)。
・ 淡水域: ニカラグア湖では魚類につき高い生物多様性が見られる。
・ 陸域: ミドリコンゴウインコ(lapa verde)、ダント(danto)、ニカラグア・クモザル(mono araña nicaragüense)。
・ カエル(rana)の新種。
[注] lapa: f.[貝]カサガイ(笠貝); [中米][鳥]コンゴウインコ.
* 戦略として
・ 詳細な生態学な調査。
・ 自然のクリティカルな棲息域に関する確認(同定)作業。
・ 緩和の階層(jerarquía de mitigación)を実施すること。
・ 自然保護機関の協力をえながら、避けがたいインパクトを緩和し相殺(オフセット)するための計画を策定すること。
ニカラグア湖および水資源
* ニカラグア湖では水が備蓄される (貯水する溜め池である)。
* プンタ・ゴルダ川は堆積物に関して強い負荷をもたらす。
* 塩分の浸入に関して潜在的リスクがある。
* 追加的な水資源の必要性に関して評価を行う。
* 戦略について:
・ 運河システムのオペレーションにおいて、ニカラグア湖の水の消費量を最小限にする。
・ 塩分の浸入および水の消失をコントロールできるような閘門設計を行なう。
・ 水文地質学、水文学、および地球物理学的な調査研究を行なう。
・ 流域管理についての向上を図る。特にプンタ・ゴルダ川の流域管理を向上させる。
先住民族について
* 運河はカリブ海側のプエブロ・ラマ(Pueblo Rama ラマ族)の伝統的な領域(テリトリー)の一部を横切り、またリーバスにある
ナウア(Nahua)・コミュニティの領域の近くを通過する。
* 戦略について:
・ プエブロ・ラマ(ラマ族)との直接的な相談および参加を図る(意見交換を行なう)。
・ 太平洋側に存するナウアの領域に被害(損害)をもたらすことを避ける。
・ 地域のコミュニティからの「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(consentimiento previo, libre e informado; FPIC)を得る
ために取り組む。
[参考]
* FPICについて、英語版ウィキペディアの定義によると、⌈Free, prior and informed consent (FPIC) refers to the rights of local communities, particularly
indigenous peoples, to participate in decision making about issues impacting them.
Examples include natural resource management, economic development, uses of traditional knowledge and genetic resources,
health care and education.⌋ と記されている。
* 又、
「Forest Peoples Programme」の定義によれば、⌈‘Free prior and informed consent’ (FPIC), is the principle that a community
has the right to give or withhold its consent to proposed projects that may affect the lands they customarily own, occupy or otherwise use.
FPIC, for years advanced by FPP, is now a key principle in international law and jurisprudence related to indigenous peoples.⌋ と記される。
http://www.forestpeoples.org/guiding-principles/free-prior-and-informed-consent-fpic
* ⌈世界の森林と持続可能な森林管理⌋(REDDのためのFPICガイド
ライン作成プロジェクト)。
www.gef.or.jp/activity/forest/world/redd_fpic.html
森林減少及び土地利用の変化に対応するための仕組みとして最近注目されているREDDを紹介するサイト。
提供: 財団法人⌈地球・人間環境フォーラム⌋ (Global Environmental Forum)
非自由意思による再定住 (強制的な再移住 reasentamiento involuntario) について
* 運河ルートは主に農村地方を通過する(運河が通る西部地域の区間では農村地方を通過する割合は少ない)。
* 非自由意思による再定住(強制的な再移住)の割合はまだ把握されていない。
* 戦略について:
・ 調査研究の対象エリアにおいて詳細に社会・経済的な調査を行なう。
・ 運河プロジェクトの直接的な影響を受けるエリアにおいてセンサスを準備する。
・ 再定住(再移住、再入植)という選択肢によって影響を受ける家族らに対し直接的な相談を諮る(意見交換を行なう)。
熱帯森林の被覆傾向について
● 熱帯森林の被覆傾向: 伐採パターンは北西から南東方向へ進んでいる。 [拡大画像: x26149.jpg]
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・ 1983年~2014年の間における森林の消失。
・ 調査対象エリア: 23,773平方km。
・ 年間145平方㎞の消失。
・ 40%以上の消失。
・ 森林伐採のパターンとして、北西から南東方向へ進んでいる。
・ 森林伐採の割合は増加傾向にあると見られる。
・ 保護区周縁の土地においては、伐採が漸次増加しつつある。
ネット(正味)のプラス(正)のインパクトの概念について
* 森林伐採の傾向に関し、次の方策によって元の状態に戻す:
・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダの自然保護区へ伐採がさらに広がり侵入して行かないように防止する。
・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダの自然保護区において悪化する傾向にあるエリアのリハビリテーション(再生化)を図り、
流域管理を改善する。
・ 生活上のより良い条件や代替の条件を編み出す。
・ サン・ミゲリートのラムサール条約の登録サイト(Sistema de Humedales San Miguelito)を改善するために、埋め合わせの
措置を施したり、財政的措置を講じる。
[注]サン・ミゲリート登録湿地サイトはニカラグア湖に注ぐトゥーレ川の河口域とサン・フアン川のそれとの間に位置する。
インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダ保護区を保全すること
* 戦略について:
・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダ保護区へのさらなる植民 (入植・移住・定住) を防ぐために、運河を防壁(防柵)
として活用すること。
・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダ保護区を再生復活させるために、関連する資源やキャパシティを整える。
又、さらなる悪化を防止する観点から、天然資源を保全するためのパトロールを強化する。
・ ラマの土着でない人々については、農牧生産のための新しいエリア内において設置される保護区の内側ではなくて外側での
再入植 (再定住・再移住) を認めるものとする。
サン・ミゲリートのラムサール条約登録サイトについて
● サン・ミゲリートのラムサール条約登録サイト [拡大画像: x26151.jpg]
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* 提案されているルート (赤線表示) はラムサール条約の登録湿地を通過する。
* 当該エリアは、農業・牧畜業や侵入種(侵略的外来種)によってすでに影響を受けてきた。
* 戦略について:
・ サン・ミゲリートの複合的な湿地を埋め合わせ元に戻すための措置につき計画を策定するために、ラムサール条約および
ニカラグア政府と相談する。
再定住(再移住・再入植): 土地から⌈より良い⌋土地へ
・ 現在居住する村落に再入植(再定住・再移住)させる。
・ より良い土地、即ちより生産的な土地をもって、生活上のより良い諸条件を提供する。
・ 森林の破壊を招いている現実の生存農業に対する代替となりうるような雇用を提供する。
・ 運河開削後の浚渫土をもって農業利用に適するような緩やかな起伏をもつ土地を造成する。
・ 道路を良くすることによって市場への輸送条件を改善する。
・ 生存農業から近代的で生産性があり持続可能な農業へ移行するよう促進する。
実際の活動―生物多様性および水質
・ 生物多様性が見られる領域での取り組み―雨期(10月~12月/2013年)。
・ 生物多様性が見られる領域での取り組み―乾期(3月~5月/2013年)。
・ 海洋環境、淡水、および陸域における生物多様性、水および堆積物に関する完全なサンプリング。
・ 主要な集団(グループ)のサンプリング―植物相、鳥類、大小の哺乳類、爬虫類の両生動物、陸棲の甲殻類、魚類、水生無脊椎動物、
植物・動物プランクトン、昆虫。
・ フィールドでの研究活動(フィールドワーク)では、WCSやFUNDAR(保全や環境保護活動を行うニカラグアの主要なNGO団体)との協力を図る。
・ 良く知られている多数の地方在住専門家を含んで、ERMの30人の専門家やニカラグアの80人以上の生物学者や専門家が参加した。
進行中および将来の活動
・ 文化的資源に関するベースライン。
・ 相談会(意見交換会・協議会)およびR/D(協議に当たっての諸条件 términos of referencia, (英語)terms of reference)。
・ 影響を受けるエリアの社会・経済的な特性。
・ 再定住(再入植、再移住)のためのセンサス。
・ 運河プロジェクトのルートおよびその潜在的なインパクトに関する精査。
カリブ海側の入り口、アトランタ閘門~トゥーレ、ニカラグア湖、太平洋側の入り口。
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関連資料編
ルートの精査: カリブ海側の入り口
1
● カリブ海側の入り口 [拡大画像: x26152.jpg]
* 提案されているルート(赤線表示)は、セロ・シルバ自然保護区(Reserva Natural de Cerro Silva)、メソアメリカの生物
回廊の一部、運河によって影響を受けることになる生物学的により重要なエリアを横切ることになろう。
* 環境および社会的な主要インパクト
・ メソアメリカの生物回廊: より良い状態にあるカリブ海寄りの15~20㎞、回廊(ジャガーなどの棲息)、椰子の森林
(ラフィア Rafia)、プンタ・ゴルダの北方にある⌈ヨリリャル(Yolillal)⌋(カエルの新種)。
・ プンタ・ゴルダ低地(Bajo Punta Gorda): 水生属種に関する高い生物多様性、およびインディオ・マイス保護区における
影響の緩和・軽減(amortiguamiento)。
・ 先住民族のテリトリーの十字路(交差点): 伝統的な先住民族の土地がおおよそ15㎞わたって交差する―
プンタ・アギラ(Punta Aguila)とモンキー・ポイント(Monkey Point)との間にあって、先住民族の人々が直接あるいは間接的に
影響を受けることになる2、3の小さなコミュニティが存在する。
・ ブービー・キー(Booby Cay)における潜在的影響: バードライフ・インターナショナル(Birdlife International)
によれば、鳥類にとっての重要なエリアが存在し、海鳥類、カメ類、魚類、およびサンゴにとっての重要な棲息域となっている。
・ 海ガメに関する潜在的な影響: わずかな営巣地(anidamiento)ではあるが、飼料(forraje/飼い葉、まぐさ)となる
ものの重要な棲息地であり、4つの絶滅危惧種の回遊ルートになっている。浚渫作業(dragado)、港湾建設、および船舶の
通航のような諸活動は、生息域に影響をもたらし、又海ガメとの衝突の可能性を増大させる。
・ グヤマ(Guyama)のイルカに対する潜在的な影響: モンキー・ポイント近傍で発見された一つの珍種である。
ニカラグアでは初めてその遠方視認がなされた。同様な影響が海ガメについてもあてはまる。
* インパクトの緩和(軽減)戦略
・ メソアメリカの生物回廊: 運河の両側10kmにおける最小限の開発; 物を処分しないこと、又ブルーフィールズ湾の
南東にある湿地と運河とを連結させないこと。
・ パルマ・フォーレスト(椰子の森林)または⌈ヨリリャル⌋: ⌈ガラスのカエル (rana de vidrio)⌋という
新種などのために必要とされる水文および生息域を維持する。
・ インディオ・マイス保護区: 同保護区から出来る限り遠ざかること、さらなる入植(colonización)を避けること、
プンタ・ゴルダ川の南側に居住する人々には再びその地に留まってもらうこと(relocalizar)、および同保護区についての効果的な
公園管理サービスを強化すること。
・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダにおいて質的低下が認められるエリアついて、その再生を図ること。
又、森林管理およびアグロフォレストリー(agroforestería)を促進すること。
・ プンタ・ゴルダ川: 閘門よりも下流の水域において、運河と同河川との統合化(一体化)を図ること。
・ ブービー・キーおよび礁105(Banco 105): 無線通信を3kmの範囲まで緩和するエリア。
・ 浸水エリア: ダム(堰、embalses)の規模を最小限にする。
・ 海ガメ保護のための努力を向上させるためにNGOと協力する。
・ 影響を受ける先住民族についてコーディネートし、生存のための対策を改善し、彼らの伝統を尊重する。
・ 哺乳動物や海ガメ、および礁105のような重要なエリアに対する影響を最小限にとどめるために、船舶の通航に関する計画
を立てる。
ルートの決定: アトランタ ~ トゥーレ
* 環境および社会的な主要インパクト
・ 高さ30mの閘門はおおよそ395平方㎞のエリアを浸水させる; 棲息域の消失や、これらゾーンの陸域動物相の属種移動(入れ替え)を引き起こす
ことになる。
・ 魚類の大変高い生物多様性をもつプンタ・ゴルダ川は、棲息域の消失と水文学的な変化によって影響を受けるであろう。
・ アトランタ(Atlanta)の北東に存在する、潜在的に新しいカエルの一属種の棲息域は、浸水することになろう。
・ 運河が通過する地帯は、クモザル(mono araña Ateles geoffroyi)の個体数を養っている(UICN-CR)エル・ロブレ (El Roble) 近傍の森林
のいくつかのエリアに対して、インパクトをもたらす可能性がある。
・ 特に運河建設期間中における人間の存在の増大、および狩猟や漁労の増大。
・ アトランタやポーロ・デ・デサロージョ(Polo de Desarrollo)を含むさまざまなコミュニティにおける土地の取得や再入植(再定住)。
・ 主に農牧業によって質的な低下が認められ、又起伏が多い陸上のエリアについては、浚渫土の管理の在り方が影響をもたらすことになろう。
再定住を余儀なくされるコミュニティを支援するという観点から、持続可能な農業に向けた土地利用の整備を図ることも可能となろう。
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