A 運河計画
1.01 ニカラグア両洋間大運河計画(以後、「運河計画」)は水路式の運河をもって大西洋と太平洋とを結ぶ
というもので、その投資額は2006年の価格水準で180億ドルに相当する。計画は2つのコンポーネントをもつ:
(a) 25万載貨重量トン数までの大きな船舶が通行できるだけの規模をもち、かつニカラグア湖の通過距離80kmを含む
総延長286kmの距離をもつ、両洋間運河に関する調査、設計、資金調達(資金繰り、財源の調達)、建設、およびオペレー
ションを含むインフラ整備;
(b) 運河の影響を受けるニカラグア国内地域における環境の回復・再生(restauración)、保全、開発。
1.02 南北アメリカにあっては水路式の新しい両洋間運河が必要である。2005年にあっては69.61億メトリック・トン
(MT)、2019年にあっては105.29億トンと推定される世界海上貨物量のうち年間約2億トンまたは2.9%がパナマ運河を通過
している。パナマ運河では中型船舶の通過を可能にするためその拡張が計画されているが、この拡張によって2019年(ニカラ
グア大運河がオペレーションに入る最初の年とされる)にあっては約3億トンの貨物量が通過できることになろう。
それは2019年における世界海上貨物量の2.9%、あるいはその年において推定される潜在的需要量9.12億トンの約3分の1を
占めることになろうが、その需要量の相当部分が満たされないままである。現実に、パナマ運河を通行不可能とされる大きさ
の船はより多くの運航コストがかかっており、またより多くの航海日数を要している (その運航ルートからして、
一航海当り200万ドルの経費、および36日間の日数が余分にかかっている)。それにもまして、拡張されるパナマ運河
を通行することができる船よりもさらに大きな船が時を追うごとに建造されており、それゆえに需要を満たすために
両洋間をつなぐ効率的で効果的な新通行路が必要とされている。これらのことから、パナマ運河と新しい運河とは基本的に
補完し合うものであり、競合し合うものにはならないであろう。
図1.1
1.03 歴史的にみて水路式の両洋間運河に対する適格性をもつニカラグアは、大西洋と太平洋との間にあってアメリカ大陸の
中央部における最も低い土地をもち、戦略的に重要な地理的位置をもっている。また、運河が推奨されるルート上に
ある地域では豊富な水資源(recursos hídricos)が賦存するが、それもほとんど利用されていない。
それらの水資源の中でもニカラグア湖のそれは推奨ルートの中央部にあって、サン・ファン川を通じて毎日4,120万m3
の湖水が大西洋に流れ出る。また、推奨ルートの北に位置するエスコンディード川については、その上流部において
毎日3,370万m3の水を
排出する。運河は毎日660万m3の水をそのオペレーション上必要とするであろう。このことから、ニカラグアは、
南北アメリカにおいて水路式の新しい両洋間運河を建設する上で最良の選択肢をもつといえる。
1.04 運河を建設可能なルートとして6つのルートが確認されている。その中で推奨されるルートは、太平洋から
始まって(図1.1)、グランデ川(ブリット川)、ラス・ラハス川、ニカラグア湖にあってオメテペ島の南部、オヤテ川、ラマ川、
ブルーフィールヅ湾、ベナード島の南部(ハウンド・サウンド・バー)を経て大西洋へいたる(ルートNo.3、パラグラフ3.08から
3.17)。それらは地質、地形、水文、環境、コストなどの面でより優位な特性をもつ。
1.05 運河はニカラグア議会にて特別法の承認から始まって約11年をかけて完成されよう。その特別法の最初の法案が
すでに準備されている。2019年および2025年のそれぞれにおいて、4.16億トンおよび
5.73億トンの海上貨物が運河を通過して運ばれると推定される。(これはそれぞれ世界海上貨物量の3.9%および4.5%、
あるいはニカラグア運河の通行に振り向けられる可能性のある潜在的需要量(あるいは大運河通過に関係すると見込まれる
潜在的需要量)の約46%を占めると推定される)。運河計画の内部収益率(TIR:tasa interna de retorno)の
期待値は約22%であり、それは財政的支援効果によって国家的な財産に対する大きな収益性が見込まれる。
1.06 ニカラグア政府は運河計画をコンセッション方式、あるいは長期の公民参加協定方式(75-90年間の
更新可能な協定)方式(Acuerdo de Participación Público-Privado: APPP)によって実施することになろう。
そのことによって、公民が、大運河計画に関する調査、設計、資金調達、建設やオペレーショ-各種サービスの貸借や維持
管理を含むの労苦を共にする。その方式は、ローカルまたは国際的な、有資格をもつ民間投資機関のみに開かれた、
透明性のある国際入札を通じて決定されよう。これら民間投資機関およびニカラグア政府の権利義務については、
関係者間で署名される協定や、前述の特別法に則って確立されることになろう。
1.07 ニカラグア政府は主権的権利を行使するとともに、一般的および環境に関する安全に責任を果たすことになろう。
そして又、このようにして既存の判断事例を通じて、あるいはそれを創出しながら、大運河に関するオペレーション上および
契約上の全般的な監督の責任を果たすことになろう。運河は国際的、中立的、および妨げられることのない公共サービス
という特性をもつであろう。
B 運河計画の経緯と正当理由
1.08 おおよそ500年前から、アメリカ大陸を横切って太平洋と大西洋との間を結ぶ、水でできた(水路式の)一つの
通行路についていつも論考されてきた(Anex1)。その通行路に関する探索や調査から300年以上も経た19世紀の末頃になって、
パナマ運河の建設が着手され、1913年ついに完成した。
表1.1 パナマ拡張運河、スエズ運河、ニカラグア運河との比較
| パナマ拡張運河 | スエズ運河 | ニカラグア運河 |
運河(水深) | 13.8 m | 21 m | 22 m |
運河(延長距離) | 80 km | 195 km | 286 km |
通航船舶(大きさ) | 120-130,000 dwt** | 200,000 dwt | 250,000 dwt |
通航船舶(水深) | 12.3 m* | 19 m | 20 m |
閘門(長さ) | 427 m | 閘門なし | 466 m |
閘門(幅) | 55 m | 300-365 m | 64 m |
* 季節的な変動:水深 16.1m、幅員 14.6m
** パナマによる
dwt: deadweight tonnage 載貨重量トン
1.09 パナマ運河はおおよそ54,000積載重量トンまでの船や、部分的に貨物が詰め込まれた20フィートコンテナ(TEU:英語の
略字)約4,400個を運ぶコンテナ船までを通行させることができるが、海上輸送の増加に伴ってパナマ運河の船舶通行量
は飽和状態になってきた。実際のところ、パナマ運河は約2億トンの貨物を通過させている。それは年間の世界海上
貨物量の2.9%に相当し、またパナマ運河の通行に振り向けられる可能性のある貨物量または潜在的な海上輸送市場の
3分の1に相当する。パナマによれば、計画されているパナマ運河の拡張によって、12万~13万積載重量トン(dwt)クラスの船舶を通過
させることができ、また約10,500TEUまでのコンテナ船をおそらく通過させることができることになる。
ただし、喫水線については全て12.3mまでという限界があるが、季節的にはその喫水線限界は14.6mまでとされる。
(現行の大きさおよび喫水線を上回る船舶:新ポストパナマックス-NPPX-表1.1)。このように、待ち時間やサービスの質を
気にすることもなく、パナマ運河は約3.5億トンの貨物量を通過させることができるであろう。
その貨物量は世界海上貨物量のなかでそれなりに一定のシェアを維持するものであり、パナマ運河の通行に振り向けられる
可能性のある潜在的需要のうちの約3分の1を占めるとしても、なおも満たされない相当量の需要が残されている。
1.10 運河のオペレーション上のより高い効率とより大きな収益性を追及しつつ、規模の拡大による経済性
を確保するために、15万トン~25万トン積載重量トンの船、および10,500TEUを超えるコンテナーを積載するコンテナ船の
建造と運航が海運業の傾向として見られる。
実際のところ、コンテナ船を除く1,400隻の新ポストパナマックス(NPPX)型船舶が見られる。あるいは積載重量トンで
見た場合それが世界輸送可能量に占める割合は41%である。
これらの船舶のうち約900隻がその大きさからしてニカラグア運河を通過することができよう(25万積載重量トン
までの船舶、またはニカマックス(Nicamax)・サイズといわれる船舶まで)。2019年においては約3,000隻のニカマックス・サイズ
の船舶就航が見込まれるが、大運河を通過することで実際的に時間を節減することによって、さらにまた当該船舶の大きさ
からして船舶運航上かなりの効率化が図られることによって、それらの航海回数を倍化することができよう。
1.11 運河計画に関連する海上輸送について言えるのは、パナマ運河に替わる別の海上輸送ルートを使わなければならない
ことによって多大のコスト負担が生じるということである。
(i) 米国東岸から日本へ、またはその逆を航海する15万トンクラスの船は、その往復の航海においてさらに34日間以上の
航海日数を必要とし、約200万ドル(1トン当り13ドル)の追加コストが発生する。
(ii) 15万トンクラスの船が南米北部/北東岸と日本、または前者と米国西岸との間を航海すれば、さらに36日間以上の
航海日数を必要とし、同じような平均的追加コストが発生しする。
(iii) 10,500TEUのコンテナ船が、スエズ運河をへて(よく利用されるルートではないが)米国東岸から日本へ向かう場合、
その追加コストはその片道の航海につき約50万ドル(コンテナ当り48ドル)かかり、その航海日数は7日間余計にかかる。
(iv) 米国海岸から米国大陸を横断する「ランドブリッジ」をへてアジア北東岸へ向かう、片道の航海に要する追加コストは、
コンテナ当り約230ドルで、その輸送日数はパナマ運河経由の場合よりも6-8日間少なくて済む。ただし、この輸送ルート
は急速に飽和状態になりつつあり、実質的に拡大するには限界がああろう。上述の追加的なコストや航海日数は大運河を経由
することによって縮減されることになろう。
1.12 実際のところ、世界的なレベルにおいて、パナマ運河のもつ制約に対する解決策を見出す必要性がある。現パナマ運河の
部分的な拡張プロジェクトはその一つである。もちろん、この拡張プロジェクトが完成した場合にあっても、運河の船舶
通航可能量は海運市場における需要を満たすことにはなりえないでであろう。その需要は、2019年および2025年のそれぞれに
おいて約9.12億トン、12.22億トンと見積もられている。年間約3.5億トンと推算されている拡張パナマ運河の通航可能量は、
いずれの需要をも満たしえない。
1.13 海運市場における運河通行への需要と運河における船舶の通航可能量との間でこれまで提起されてきたギャップは、
中長期的に見て世界海上輸送に対して増大しつつある需要を満たしうるだけの規模をもつ両洋間の新しい水の通路、それも
技術的、財政的、経済的に実現可能というだけでなく、地理的位置、水文、環境という観点からしても実現可能な
水の通路の必要性を大いに喚起させるものである。
1.14 これらの必要性に照らして、ニカラグアにおいて両洋間の水路式の運河を建設し、オペレーションすることの実現
可能性を判断するための予備的な調査を遂行する目的で、ニカラグア政府は、1999年に「両洋間大運河作業委員会」
(la Comisión de Trabajo para el Gran Canal Interoceánico)を設立し、2002年には刷新され、また2006年に改組された。
1.15 運河計画のこの概略書(プロフィール)は、予備的情報をもたらしてくれる、同委員会の作業結果の要約である。
ニカラグア両洋間運河計画は実現可能であること、ニカラグアにとって大きな利益を
もたらすものであり、また中央アメリカ地域、世界通商、海上輸送、計画に参加する投資者にとっても大きな利益を
もたらすことを基本的に結論づけている。さらに、運河は世界的な必要性を満たすものでありえること、水や低い土地を
全く自由に利用できることを含む、比類のない天然資源や地理条件からして、運河を建設する上での最良の場所は
ニカラグアであること、また環境を良くすることになること、収益性があること、そして多くの投資や新たな
雇用の創出がもたらされるとの結論である。
C 運河計画の実施のインパクト
1.16 大運河計画はニカラグア政府によって推進される国家プロジェクトである。ニカラグアや中米地域にとって、そして世界的
レベルにおいて相当なプラスのインパクトをもつ。
1.17 運河計画はニカラグアの経済成長を加速させよう。すなわち、運河が建設されない場合における楽観的な予測と
比較して、国内総生産(PIB)や一人当りの国内総生産をほぼ2倍へと増加させ、また重要で新しい投資を創出することになろう、
、なおその予測についての分析はこの概要書の目的ではない。大運河計画がニカラグア経済にもたらすその他のインパクト
については別にして、大運河の建設とオペレーションはただ単にいえば、2005年において国内総生産(PIB)49億ドルから
2025年には約208億ドルへと拡大することになろう。なお、大運河建設がない場合における2025年での楽観的な見込みである
118億ドルと比較できよう。ニカラグア人の一人当りの所得はその同じ期間に857ドルから2,258ドルへと増加する
であろう。全て2006年での価格を基準にして、運河がない場合の楽観的な見込みである1,285ドルと比較できよう
(Anexo2)。この意味するところは、運河がなかりせば経済は年4.5%となるであろうという想定の下、税収や財政面、
および収支バランス上の利益に加えて、PIBの年間平均成長率はおおよそ9%ということになろう。
1.18 運河計画は恒久的に、また相当数にのぼる雇用をもたらすであろう(建設期間中には新規の直接雇用として約40,000人、
オペレーション期間中には同じく新規直接雇用として約20,000人、さらに120,000人の間接雇用が見込まれる)。
これはニカラグア人の生活レベルの向上に寄与するものである。さらに、有資格の人的資本に対する大きな必要性が生まれて
こよう。そのことはニカラグアの教育レベルを上げ、教育計画を見直し、新しい教育科目を創設することにつながろう。
1.19 運河の建設は多くのセクター(金融、商業、観光、サービス、通信、インフラ、製造、教育)に、ニカラグアの大西洋、
太平洋、中央地域を効果的に結合しその結びつきを強めながら、新規の投資をもたらすであろう。特には、大西洋地域がもつ
経済、文化、社会的な潜在力を国全体が一丸となって開発することを可能にする。
1.20 大運河という自然を相手にした規模の大きい計画であることから、ニカラグアにおける環境悪化を抑制するのみでなく、
運河自身によるプラスおよびマイナスのインパクトを中和し、環境に対する真の開発(これまで以上に環境を良くすること)
を可能にするであろう。大運河はそもそも、それによって影響を受ける運河地域における環境の回復/再生(restauración)
を実現することにつなげ、かつその労苦を共にするというものである。特に、環境の再生を図ることには、運河のオペレーションに必要不可欠とされる
水資源(recursos hídricos)の持続可能性を保証するという目的があり、その持続可能性を保証するものとして、生物多様性を
良くすること、土壌の保全、大気の清浄化、および森林や水の管理などが含まれている。この過去30年において、ニカラグアは
森林の伐採を含む環境への損害を被ってきた。運河にともなう環境管理によって、とりわけ、前世紀半ばからなされてきた
樹木栽培や水の生産にかかわるレベルを大いに取り戻すことを可能にするであろう。また、運河は直接的に影響を受ける
地域のそれを含め、多くの人々の集団にプラスの良い影響を及ぼすであろう。運河計画は環境分野における初期投資と
して3億ドルを見込んでいる。
1.21 地域レベルにおいては、運河計画は、中米関税同盟、南北アメリカにおける地域間通商である米国との中米自由貿易
協定(英語略字:CAFTA)、将来における欧州連合との中米貿易協定とかの恩恵を促進しつつ、中米地域の発展や当該地域の
実務面および社会インフラ面での真の統合への貢献につながるであろう。さらに、運河計画は世界の全ての諸地域と中米との
広範囲にわたる統合のための推進役を果たすことになろう。
1.22 世界レベルにおいては、大運河は、世界の海上輸送において増大する需要を満足させこと、海上輸送システムの効率を
高めることを促進しつつ国際貿易を発展させることに寄与しよう。さらに、大運河があれば、海の商船隊の規模を順々に広げつつ
船の大きさや効率を向上させ、航海ごとの航海日数を減らすこととなり、輸送コストを減じることにつながるであろう。
また、実際のところ、大運河あれば、輸送のコストや時間の問題にかかわずらうことなく、いろいろな製品を市場において
「取引が可能な」状況をもたらすであろう。
1.23 大運河は、貿易に当たってより遠く離れたルート上にある利用者たちにとっては、コストと時間の実質的な縮減をもたらす
ことになろう。例えば、北米(東岸)ブロックとアジア間、南米(太平洋側)と欧州/米国東岸、南米(北岸/北東岸)とアジア/米国西岸、欧州と米国西岸、
南米南部共同市場(MERCOSUR) 諸国と北米自由貿易協定(NAFTA)諸国との貿易は当たってこのような縮減がなされる
ことは、大運河を利用することへの財政上のインセンティブを海運会社に対して次々にもたらすことになろう。
これらのことは、
船舶にまつわる投資に対する利益還元上の実質的な増大をもたらし、また海運会社のクライアントに対してよりよい
運賃表を提示できるという可能性をもたらす。その増大と可能性をもって船舶の航海数を倍化しながら、船の年間利用率に
関する潜在力を大いに高めることになろう。
1.24 運河は、流動的金融資産を、生産性と収益性がある金融投資に置き換えるための機会である。さらに、運河計画は
基本的に財政的な観点からして収益性のあるもので、次のようなひかえ目なシナリオを描けよう。すなわち、2006年での
価格基準で、運河のオペレーションの初年における歳入約46.75億ドルから、25年間後におけるおおよそ150億ドル
までの歳入までを鑑みれば、それら単年ごとの損益はプラスということになろう。
D. 潜在的リスクの開示
1.25 運河計画を構想立案や設計することによって、大運河のような投資プロジェクトに見られるような、あるいはまた
開発途上の世界において見られるような普通の潜在的リスクをプラス・マイナス・ゼロに緩和するか、あるいは最小限にする
こと、それによってリスクを遠ざけることが可能となるであろう。
1.26 ニカラグア両洋間運河の法的枠組みに関する法案の議会での承認、その設計・建設・オペレーションに責任を
負う民間企業とニカラグア政府との間で締結される契約、および特に大運河は国際的および中立的な公共サービス
であるとする条項、そしてまたニカラグアの主権を保持しながら関係者間での違いを解消するためにニカラグア自身が
参加することになる仲裁裁判への提訴の可能などは、この種のプロジェクトに固有な一連の決め事に対する変更
とか、政策上の不確定さを最少限なものにとどめおくためのものといえる。さらに、世界における運河建設の重要性、
ニカラグアが公共的なものを管理する上での透明性、その運河建設にもたらされてきたか、さらにまたもたらされる
であろう内部的な支援や専門的な管理は、先に述べたような局面をさらに最小限なものにとどめることに寄与する。
1.27 設計・建設に関する諸基準は、運河の推奨ルートと同じように、自然災害のリスクを軽減することになる。
推奨ルートに関連して、歴史が教示するところによれば、火山・地震活動は中央アメリカの他所よりもはるかに穏やかで
あり、重大な損害をもたらしてはこなかった。さらにまた、推奨ルートはいかなる河川にも邪魔されないことはない。
1.28 「環境開発」は運河計画の2つのコンポーネントの一つをなすものである(第5章:環境について)。
運河計画は「環境を友にする」という計画であり、運河計画そのものが環境の多くの局面に関わり合って依存していると
いえる(例えば、将来における水の持続可能な生成)。「環境開発」の焦点としては、
環境のインパクト調査および、時に人々の定住についての調査を実現し、かつ必要とされる行動を明らかにすることである。
その目的とするところは、発生する前に運河建設のマイナスの潜在的なインパクトをプラス面で補い、対応策や備えをもってマイナスをプラスに
転換し、プラマイゼロ・中和するためであるが、それだけではない。さらには、ニカラグアにおける環境の悪化を
取り戻し再生し、かつ環境開発に関して実際的かつ調整のなされた捉え方・見方をするためである。
このことは、ニカラグア国民、ニカラグア国家、さらに運河計画自身にとって、運河計画を環境上の優位性をもつものにさせよう。
1.29 運河計画は、オペレーターに関し、コンセッション方式または、おそらくは国内または国際的にコンソーシアム化した
民間企業への公民参加協定(APPP)方式にて実施されよう。そのことは、国際競争の基準の一部として条件付けられる企業、事業経営、
、および財政上のキャパシティ・資格能力および適格性を有することのほかに、世界の資本市場へのアクセスもつであろうことを
意味する。大運河よりもはるかに多くのコストがかかるプロジェクトが建設されてきたといわれる。例えば、イタイプ
水力発電プロジェクト、ユーロトンネル、ラス・トレス・ガルガンタス(Las Tres Gargantas)水力発電プロジェクト、プドン(Pudong)
工業団地、アスワン(Asuan)水力発電プロジェクトなどである。それにもまして、この運河計画は、流動資産のうち
自由にしうる部分を投資に回すために、規模が大きく長期にわたる、
収益性のある投融資プロジェクトを金融市場が求めている状況の中での一つの機会である。
そしてまた、運河計画が一つの投資対象プロジェクトとして分析されつつあるということ、また民間セクターによってその
実施がなされようとしているのは初めてのことである言われる。前述のとおり、実際の「作業委員会」の業務や
法によって設立されることになっている「大運河計画委員会」の業務に関連して、
運河オペレーターを確保せねばならないという履行や財政上の保証に結びつけ、運河計画の規模にかかわるさまざまな
局面を管理し、その計画の開始とその終了を保証するのに貢献しよう。
1.03 関連法案は、コンセッション方式とするか、公民参加協定方式を取るか、そのいずれかについての公開され透明性の
ある国際競争を必要する。唯一、有資格の民間企業あるいは投資者だけがそれに参加できるもので、「大運河委員会」
およびケース判例によって評価され承認される。さらに規則として、運河オペレーターの資本については
国家、国営企業、あるいは公的セクターからの会員、株主、関係者は認められないであろう。
E. 運河計画の実施にかかる暫定プラン
1.31 「実施暫定プラン」の下では、ニカラグア大統領は2006年9/10月に運河建設計画を発表するものと期待される。その次ぎに
その承認を求めて議会にこの運河計画法案を提出すると期待される。その承認はこの建設計画の進捗にとって不可欠なものである。
1.32 運河計画はその開始の現時点からオペレーションに入るまで12年間要るであろう。その内訳としては、一般的には、
提案書作成のための招聘、その受領と評価、交渉、関係する契約の締結までの2年間、調査や予備的設計に3年間、最終設計
および建設に6年間かかろう。
このページのトップに戻る/
Back to the top of this page
|