太古の昔、阿蘇山の噴火活動で溢出した溶岩流が五ヶ瀬川に沿って帯状に流れ出し、急激に冷却したため柱状節理の懸崖になったという。
阿蘇溶岩が浸食されてできた柱状節理がそそりたつ峡谷が川沿いに何キロメートルも続く。その中心となるのが「高千穂大橋」の下から
「真名井の滝」までの700メートルほどである。高千穂峡観光ポスターの定番となっているあの絶景スポット写真は、「御橋」という橋から
切り撮られたものであることを初めて知った。懸崖の岩肌から糸を引くように流れ落ちる「真名井の滝」と、その滝下の
五ヶ瀬川のエメラルド・グリーンに染まる川面で戯れるボート風景を写している例の写真である。
それにしても、ボートに乗って水面近くから見上げれば、峡谷に覆い被さった樹林のトンネルと、落水する滝風景は
フォトジェニックであろう。雨期の真っ最中であったこともあり、また前日の雨で増水していたので、川面はかなり緑白色に濁り、
また貸しボート屋は営業休止中であった。休止は残念至極とはいえ、観る者を釘付けにさせずにはおかない峡谷の造形美に心が
満たされた。
帰りは別ルートを選んだ。阿蘇の外輪山から雄大な中央火山丘やカルデラの大平原、高森や南阿蘇の町などを俯瞰し、暫し感嘆に
浸った後、熊本を目指した。途中、2016年4月の熊本地震で崩れ落ち、最近ようやく完全に架け直しされた長大の「新阿蘇大橋」
を渡った。
さて話は戻るが、高千穂峡谷に架かる「御橋」のたもとに町営の「高千穂峡淡水魚水族館」というヒュッテ風の小さな水族館を
見つけた。宮崎県唯一の水族館ではないかと思ったが、後で調べてみるとそうではなかった。こんな内陸部の奥深い山中に
存在することに孤高と誇らしさを感じさせる水族館である。ハエゴロ(オイカワ)、イダゴロ(ウグイ)、ビンジャコ(タナゴ)、ミズクリ
セイベイ(オヤニラミ)など、魚名が地方名でも紹介されるところが嬉しい。ヤマメ、ドンコなどの五ヶ瀬川水系に棲息する淡水魚を中心に、
その他アフリカ・南米産の熱帯淡水魚なども飼育展示される。
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