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一枚の特選フォト「海 & 船」

One Selected Photo "Oceans & Ships"

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    水辺紀行「高千穂峡&淡水魚水族館」 [宮崎県高千穂峡町]

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    若い頃から一度は訪れてみたいと思い続けてきた。高校時代の修学旅行で、宮崎の「子どもの国」、霧島連峰の「えびの高原」、鹿児島・城山 などを巡った。恐らくその時に高千穂峡のことを知ったのであろう。あるいは、峡谷下を流れる川面で人々がボート遊びを楽しむという、 例の定番の「高千穂峡観光写真ポスター」なんかを修学旅行中のどこかで目にしたのかもしれない。それ以来何と60年余が 過ぎようとしていたが、2023年(令和5年)6月偶然にも高千穂峡へ旅する機会に恵まれた。

    2023年春まで千葉県市川市に住んでいた長年の友人が、事情で「都落ち」(?)することになり、熊本市の故郷へ引っ越してしまった。 彼とは関東圏内の沢山の博物館などを訪ね歩いた。時に北海道、東北、東海、中国地方などへ、あるいは台湾、フィリピンなどへ 貧乏旅行する仲であった。国内にあっては、大抵は一日二千数百円の軽自動車をレンタルして、7~10日間周遊して回った。 その彼から「ムスタング」を買って旅に出掛ける用意ができたので、早く熊本に遊びに来るようにと誘われていた。その甘言の 誘いに乗って6月上旬に訪ねた。

    彼が「ムスタング」と名付ける軽自動車を熊本フェリーに滑り込ませ、島原半島に渡り、時計回りに原城跡や口之津(くちのつ)の資料館 などを見学した後、長崎市内を丸3日間ぶらついた。その後佐世保、平戸のほか、その昔勇魚(いさな/鯨捕り)で名高い生月島、 元寇の沈船や数多くの遺物が海底から引き揚げられた鷹島(たかしま)などを周遊し、博物館・記念館、郷土史料館、歴史的史跡など15ヶ所 ほど訪ねた。

    実は、この周遊に出掛ける前日に長距離ドライブの地均しとして、熊本市東方の山都町(やまとちょう)にある「通潤橋」(つうじゅんきょう )という、国指定重要文化財である石造り・アーチ形の灌漑用水路橋を訪ねた。じっくり 見学しても日没にはまだ十分な時間が残されていた。そこで、はたと高千穂峡までは1時間余りの距離であることに気付いた。 二人は顔を見合わせ阿吽の呼吸で足を延ばすことにした。かくして、思いがけず、高校生時代から心の片隅に引っかかっていたあの 峡谷の絶景スポットを訪れ、その自然造形美を眼底のスクリーンに焼き付けることができた。
    * 辞典内関連サイト: 石造りアーチ水路橋「通潤橋」 [熊本県山都町]。

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    五ヶ瀬川の峡谷と「真名井の滝(まないのたき)」。画像上部に見えるのは「御橋」。高千穂峡観光写真ポスターはこの橋上から 切り撮られたものが多い。

    太古の昔、阿蘇山の噴火活動で溢出した溶岩流が五ヶ瀬川に沿って帯状に流れ出し、急激に冷却したため柱状節理の懸崖になったという。 阿蘇溶岩が浸食されてできた柱状節理がそそりたつ峡谷が川沿いに何キロメートルも続く。その中心となるのが「高千穂大橋」の下から 「真名井の滝」までの700メートルほどである。高千穂峡観光ポスターの定番となっているあの絶景スポット写真は、「御橋」という橋から 切り撮られたものであることを初めて知った。懸崖の岩肌から糸を引くように流れ落ちる「真名井の滝」と、その滝下の 五ヶ瀬川のエメラルド・グリーンに染まる川面で戯れるボート風景を写している例の写真である。

    それにしても、ボートに乗って水面近くから見上げれば、峡谷に覆い被さった樹林のトンネルと、落水する滝風景は フォトジェニックであろう。雨期の真っ最中であったこともあり、また前日の雨で増水していたので、川面はかなり緑白色に濁り、 また貸しボート屋は営業休止中であった。休止は残念至極とはいえ、観る者を釘付けにさせずにはおかない峡谷の造形美に心が 満たされた。

    帰りは別ルートを選んだ。阿蘇の外輪山から雄大な中央火山丘やカルデラの大平原、高森や南阿蘇の町などを俯瞰し、暫し感嘆に 浸った後、熊本を目指した。途中、2016年4月の熊本地震で崩れ落ち、最近ようやく完全に架け直しされた長大の「新阿蘇大橋」 を渡った。

    さて話は戻るが、高千穂峡谷に架かる「御橋」のたもとに町営の「高千穂峡淡水魚水族館」というヒュッテ風の小さな水族館を 見つけた。宮崎県唯一の水族館ではないかと思ったが、後で調べてみるとそうではなかった。こんな内陸部の奥深い山中に 存在することに孤高と誇らしさを感じさせる水族館である。ハエゴロ(オイカワ)、イダゴロ(ウグイ)、ビンジャコ(タナゴ)、ミズクリ セイベイ(オヤニラミ)など、魚名が地方名でも紹介されるところが嬉しい。ヤマメ、ドンコなどの五ヶ瀬川水系に棲息する淡水魚を中心に、 その他アフリカ・南米産の熱帯淡水魚なども飼育展示される。

    [撮影年月日:2022.06.09/場所: 宮崎県・高千穂峡にて]


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