画像1は熊本県山都町に所在する、日本最大級の石造りアーチ水路橋の「通潤橋」(国指定の重要文化財)である。この橋は「通潤用水」
と呼ばれる水路の一部である。水不足に悩んでいた「白糸台地」の民衆を救うべく、台地に農業灌漑水を送るため、1854年(嘉永7年)、
矢部の惣庄屋・布田保之助や肥後の石工たちによって建造された。
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白糸台地を潤す「通潤用水」には2本ある [地図参照/出典:現地の観光案内掲示板]。その一つは「通潤用水上井手(うわいで)」と称される(画像2の薄青色のライン)。約6㎞離れた笹原川の上流の「上井手取水口」から
取水され、円形分水(分水施設)を経て、「通潤橋」の水路橋を通って台地へと向かう。
もう一つは「通潤用水下井手(したいで)」と称される(画像2の濃青色のライン)。五老ヶ滝川(ごろうがたきがわ)(笹原川へと合流する)
の「下井手取水口」(通潤橋をくぐってすぐの所にある)から取水され、台地へと流れ下り大地を潤す(画像1の通り、通潤用水上井手・
通潤橋と五老ヶ滝川(手前の河川)とは交差する)。
上井手の灌漑水が「通潤橋」に敷設されている凝灰岩製の3本の通水管(石管)へ落下し、その勢いをもって水管を通り抜け反対側へと
吹き上がるという、サイホンの原理を利用した構造になっている。農業灌漑用水路の総延長約30km、灌漑面積は約100ヘクタールに及ぶ。
通潤橋の長さは約76m、高さは約20m。
画像3は「熊本フェリーターミナル」でみかけた「熊本・山都・通潤橋」のポスターである。通水管から豪快に放水されているが、元来はそこに
詰まった堆積物を取り除くために実施されていたもの。
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画像4・通潤橋構造図の拡大画像 [出典:現地の観光案内掲示板][拡大画像: x29246.jpg]
[参考]熊本博物館に展示される、五老ヶ滝川に架けられた「通潤橋」の支保工模型(近いうちに模型画像を貼付予定)。
展示パネルに寄れば、支保工(しほうこう)とは、橋を架ける前に造られる仮設の構造物であるが、展示の本史料は着工前に試作された
模型と伝えられていること、また起工から完成まで約8年の歳月を要した旨が記されている。
[撮影年月日:2023.06.09/場所: 熊本県山都町下市] [拡大画像: x29245.jpg]
[参考]「通潤橋史料館」/山都町下市182-2/電話: 0967-72-3360