画像は埼玉県の「草加市立歴史民俗資料館」に展示される約5,300年前(縄文時代前期)の丸木舟である。
「綾瀬川の川底から出土した丸木舟」と題する展示パネルによれば、
1929年(昭和4年)、丸木舟は新田村(しんでんむら)における綾瀬川の浚渫工事中にその川底から発見された。
埼玉県内で出土してきた丸木舟は、いずれも縄文時代中期から晩期(約4,000~3,000年前)にかけてのものであるところ、
相当早い時期から丸木舟が存在し用いられていたことを窺わせる。当時の草加地域は海底にあったと考察されており、
当該丸木舟は綾瀬川の上流部から流れて来たのではないかと考えられている旨、説明書きされている。
また、2007年(平成19年)3月に「草加市教育委員会」によって作成された「丸木舟の特徴」と題する展示パネルによれば、
出土以来年代・樹種ともに不明であったものの、2001年(平成13年)に科学的分析がなされた結果、年代は約5,300年前
(縄文時代前期)、樹種はカヤと推定された。
また、発見当初の記録によれば、長さ606㎝、幅66㎝、高さは舳先で45㎝、艫で65㎝であり、全体の形状は鰹節形をしていた。
舟の大きな特徴としては、三ヶ所において、横梁が帯状をした刳(えぐ)り残しをもって作られているということがある。
帯状の刳り残しの横梁は縄文時代後期・晩期から出現したというのが通説となっているが、このような帯状の刳り残しを
もつ丸木舟が縄文時代前期にも存在していたことを示唆する史料として貴重なものである旨、記されている。