銚子沖では暖流系・黒潮と寒流系・親潮が混交し合い、また利根川の河川水も注ぎ込む。知る人ぞ知る世界でも有数の好漁場である。
そして、銚子漁港は日本でも一、二位を競う水揚げ高を誇ってきたことはよく知られる。画像1・2はその銚子漁港におけるサンマの
水揚げ風景である。タンク搭載の運搬トラックが次々と横付けされ、長い桁(ブーム)の先に取り付けられた巨大なタモ網でサンマを
荷下ろししている。訪れた2月はサンマ漁のシーズン真っ只中であったが、その不漁がマスコミ報道でも大きく取り上げられていた。
過去20年を遡ると、サンマの漁獲量激減は深刻である。全国レベルで見た場合、2000年(平成12年)から2014年までほぼコンスタント
に年間20万トンの水揚げがあった(ただし2013年のみ約15万トン)。その中でも、2007~2009年の3年間は30万トン前後を記録した
(2008年は約35万トンの水揚げを記録した)。しかし、2015~2018年については10万トン前後に減少し、2019年(令和元年)~2022年
には5万トン以下へと減少した。そして、2022年には水揚げ量はわずか1.8万トンまで激減した。要するに、過去20年間のうちで
ピークであった2008年(平成20年)以降から現在まで減少の一途をたどり、ついに1.8万トンレベルまで激減してきた。
政府の「水産研究・教育機構」は、2023年4月にサンマ不漁の要因に関する調査結果を発表した。地球温暖化の影響とみられる親潮の
南下流の弱まり、黒潮の北上流の蛇行の変化、サンマ資源にとっての生育環境の変化、マイワシやサバ類との競合関係の変化など、
多様な要因が複合的に絡むと論究されているという。突き詰めて言えば、地球規模の温暖化によってもたらされる海洋環境の変化がサンマ不漁に
もつながっており、それが根源的真因であるということらしい。
サンマの漁獲高がこれだけ激減すると、当然の結果としてその卸価格は高騰し、大衆魚どころか高級魚になってしまうに違いない。
国内の関係漁協や漁船へのサンマ漁獲可能割当量などの国内規制はどう修正されていくのか。また、日本の200経済水域(EEZ)に
隣接した公海で操業する中国、台湾などへの国際漁獲規制(例えば、サンマの総漁獲量制限、国別割当量など)はどうあるべきか。
捕鯨のような国際的モラトリアムをもって資源の保護や回復のための措置が講じられるべきなのか。将来ますます地球温暖化が
進み海洋環境や漁況がさらなる影響を受けるようになれば、日本をはじめ西太平洋の主要漁業国はその対応にいろいろな社会的課題を
突き付けられることになろう。サンマだけでなくサバ、イワシなどの他の浮魚資源の50年後の漁獲予測についてどんな想定に立ちうる
であろうか。
[撮影年月日:2023.02.15-16/場所: 千葉・銚子漁港にて][拡大画像: x29202.jpg]
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