漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 2 部 17 トロール 11 トロール トロールは日本の水産業を支えてきた漁法であり、ことに大手水産会社が独占的に行う代表的な漁法の1つ であった。水産系の大学の練習船はトロール船を基本とした船型であり、トロールはマグロ延縄とともに実習に 組込まれてきた。それにもかかわらず、実際に稼動しているトロール船を見ることは全くなく、入港中の トロール船を見ることもさえほとんどなかった。これは、漁場が遠洋であり、トロール船が入港する港は限られ、 入港日数が短かかったためである。その写真が少ないのは、各社とも技術の粋を競っていたので、見学は 好まれなかったし、船橋や作業甲板写真は撮れなかったことによる。 現在、トロール船に近い―あるいは外国ではトロール船とみなされる―基本構造の船は、沖合底曳船と 沿岸の底曳船に見られる。しかし、トロール船に分類される船は日本には数隻しか残っていない。かつての 重要性を考えると写真集の一部として揚げるのに十分でないが、集まった写真をここに示す。
[No.1: ft_image_17_11/image001.jpg]
サイドトローラの特徴として、右舷中央より投揚網するので乾舷は低い。左右非相称であり、右舷より撮ると サイドトロール船の特徴を捉えた写真を撮れる。 甲板部員室は船首部にあり、後方に向かって魚倉・機関室・機関部員室が続く。士官居住区は船橋付近の 水線上に集まる。 前のマストと煙突の位置の右舷側に逆U字型のギャロースがある。トロールウインチは士官居住区の前にあり、 これから2本のワープが前に走る。左舷のワープは前のギャロース、右舷のワープは後のギャロースを経て、 船尾(ほぼ推進器の位置)の右舷側にあるトウイングブロックで支えて曳かれる。網の力はこのトウイング ブロックにかかり、これは中心線上にない。右に旋回し、ローリングを利用して右舷中央付近から揚網する。 漁獲物の選別と箱詰めは曳網中に甲板で行われる。
[No.2: ft_image_17_11/image003.jpg]
No.3
トロールウインチ(写真では緑色)は、船橋のすぐ後の漁労甲板にある。船橋の後方に2基の鳥居型マストを備え、 前のマストはミールプラントの煙突、後のマストは主機関の煙突を兼ねる。船尾にはスタンランプ (日本ではスリップウエーと呼ばれる。しかし、スリップウエーは捕鯨母船における構造で、トロール船では スタンランプと呼ぶべきである)があり、そこから投揚網される。 漁労甲板上の作業の詳細は、「スリミ工船の試験操業」と「スリミ工船の漁法」に示した。
[No.4: ft_image_17_11/image007.jpg]
No.5
網に関するテレメータ機器(ネットレコーダと呼ばれるが、これは商品名である)は網の行動と網口おける 反射物体の状況を知る重要な機器であり、普通では網を曳けないような窪み等に集まる魚群を狙い獲りする ようなスタントローラー独特の曳網法と、処理甲板に残っている魚の量とコッドエンドに入っている魚の 推定量によって揚網時間を設定するためには不可欠な機器である。しかし、当時はまだ曳航式の受波器を 使っていた。それを吊るすブームが左舷から出ている。スクリューカレントの影響を避けるために、 このブームはかなり長い。ちょうど水平線に写っている黄色の点が受波器である。 右舷から風を受けて漂流している。ミールプラントからの排気が見られれば、それが風向きを示すので風向と 漂流方向の関係が分かるが、これらの写真では、それは分からない。
[No.6: ft_image_17_11/image011.jpg]
この写真は水深約700mの地点で操業していた底延縄船から撮影した。このトロール船は、このような大陸棚 外縁付近の急斜面の上端付近で、等深線に沿って曳網していた。 中央の鳥居型マストからの煙のように見えるのは、フィシッミールプラントからの排気である。
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[No.7: ft_image_17_11/image013.jpg]
No.8
船橋は著しく前にあるが、それとトロールウインチとの間にハッチを設けたために、トロールウインチはほぼ 中央になる。これより後方の長さによって、使える網の長さと揚網の作業パターンが決まる。 最も大きな違いは、煙突の有無だろう。船が停止して網を揚げはじめると、海中にある網がシーアンカーの ような作用をして、船は自動的に風を船尾から受けるように回頭する。すなわち、煙突が低いと、漁労甲板上で 作業をする人は主機関の排気を浴びることになる。
[No.9: ft_image_17_11/image017.jpg]
[No.10: ft_image_17_11/image019.jpg]
[No.11: ft_image_17_11/image021.jpg]
No.12
[No.13: ft_image_17_11/image025.jpg]
[No.14: ft_image_17_11/image027.wmz]
前方の鳥居型マストはミールプラントの煙突を兼ねる。
[No.15: ft_image_17_11/image029.jpg]
No.16
スタンランプの角度と後部鳥居型マストの位置の関係が分かり易い。 後部の鳥居型マストは主機関の煙突を兼ねる。
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